5月20日(土)、今年3回目の虫むし倶楽部を開催しましたが、天気予報と裏腹に小雨が降り続ける肌寒い日となってしまいました。このため、午前中は先月採集した昆虫の展翅や展脚を行い、午後は森林整備の間伐体験、夜間は予定通り灯火を道志ベースに設置し、そこに集まる昆虫を観察、採集しました。灯りを点灯して少しすると、カゲロウやトビケラなどの水生昆虫が飛来してきました。これをきっかけに小型のガが集まり始め、数を増していきます。コガネムシやゾウムシ、ゴミムシなども飛来しましたが数は多くありません。終盤にはオオミズアオが飛来し、子どもたちは大忙しでした。
(浅子薫さん撮影)
このところ、気温の変化が激しい日々が続いています。春らしいそよ風に揺れる新緑に見とれる日があると思えば、30℃を超える暑さに大汗をかいて山道を歩く日があり、また厚手の上着を探し出してはおらないといけないような日と、どうなっているんでしょう?こんな中での、虫むし倶楽部開催翌日の半日ほど、養老の森やネイチャーランドオム、その周辺を散策し生き物の観察を行いました。
ネイチャーランドオム入り口にある茅葺古民家周辺には一般住宅や別荘があり、畑や花壇、植木の植栽、草地などの環境が広がっています。こんな場所で目を引いたのは、優雅に滑るように飛翔するウスバシロチョウです。そろそろ産卵時期と思われ、メスの個体が産卵場所を探している様子がうかがえました。そんな場所の花にいたのはコアオハナムグリ。成虫で越冬し暖かくなると花に飛来し花粉をむさぼり食います。アジサイの植栽の葉の上には、ウラギンヒョウモンが飛来し翅を休めていました。
ウスバシロチョウ
コアオハナムグリ
ウラギンヒョウモン
道沿いの葉には、暖かい地方に生息していたヨコヅナサシガメが、落ちないようにしっかりとつかまっています。凹凸のある樹木の樹皮でよく見られますが、風で落ちてきたのでしょうか。畑に植えられた栗の木の葉先には、オトシブミの仲間のゆりかごがつる下がっています。左のラッパ上に丸められたものはミヤマイクビチョッキリ(矢印白)、右側の俵状に丸められたものはゴマダラオトシブミ(矢印赤)のゆりかごです。メスは葉を丸めながら内側に卵を1つ産み、ふ化した幼虫はその葉を食べて育ちます。
ヨコヅナサシガメ
ミヤマイクビチョッキリとゴマダラオトシブミの揺籃
雫カフェでお昼を食べ、歩き始めてすぐのお花畑で観察していると、あまり見ることのないヒゲブトハナムグリが花に止まっていました。草地の地上50cmくらいを、とてもコウチュウとは思えない飛び方でハエのように飛び回っています。そんな草花の間をのぞいていると、大きなおなかをしたヒメツチハンミョウを発見。おなかが重いのか動きはゆっくりです。この虫もカブトムシやクワガタ虫と同じコウチュウの仲間ですが、ユニークな生態をしています。
ヒゲブトハナムグリ
ヒメツチハンミョウ
養老の森周辺には、数本の川が流れています。今の時期どこでも見られるのがアサヒナカワトンボです。透明や赤褐色の翅は雌雄の違いや地域により変化があります。このあたりでは、オスは透明と赤褐色、メスは透明の翅がみられます。水辺に目を移すと、流れの緩やかな場所にひときわ大きなオオアメンボが悠々と滑るように移動し獲物を見つけています。川沿いの草の葉には、カメノコテントウの幼虫が歩いていました。この幼虫はクルミ類の葉を食べるクルミハムシの幼虫を捕食して育つのですが、木の上から落ちてきたのでしょうか。
アサヒナカワトンボ♂
アサヒナカワトンボ♀
オオアメンボ
カメノコテントウ幼虫
歩いていると、山のほうからハルゼミの鳴き声が多く聞こえてきました。この季節特有のセミで、マツ林がないと生息しない種類です。高木の高い場所に止まって鳴いているため、姿を確認することはできませんでしたが、雲が出ると鳴き止み、晴れると鳴き始め、時に合唱となるこの季節の風物詩です。抜け殻を探そうとマツ林を歩きましたが、残念ながら見つけることはできませんでした。そんな場所で見つけたのが、枯れて切り倒されたアカマツの樹皮についていたヒトクチタケというキノコの一種です。お饅頭のような形で、下部に小さな穴が開いているところからこの名がつけられたそうです。木から一つ採取し穴をこじ開けたところ、クロハサミムシが飛び出してきました。このキノコには他にもゴミムシダマシやケシキスイ、ハネカクシの仲間が潜んでいて、虫の宝石箱のようなキノコです。
ヒトクチタケ
クロハサミムシ
良い場所を見つけたと思いながら意気揚々と帰路についた時、私の最大のライバルに出会ってしまいました。アオダイショウの体長は冷静な目で見ると1.5~1.8mほどだったでしょうか、見つけた瞬間には10mほどの大蛇に見えました。おなかの真ん中が少し膨らみ、何かを飲み込んだことがうかがえます。この後下山するまで、細長いものがすべてヘビに見えてしまったことは言うまでもありません。
アオダイショウ
決して広い範囲の場所を長い時間歩いたわけではありませんが、歩くたびに新たな発見に出会い、季節を感じ、自然の不思議を提供してくれ、好奇心をかきたててくれる場所が身近にある道志村です。これからもそんな道志村の、虫を中心とした情報を紹介できればと思います。
虫むし倶楽部 部長 守屋博文